プラントにおいて、ポンプや熱交換器、タービンといった機器類を人間の臓器に例えますと、配管は、それらを繋ぐ血管(動脈と静脈)をイメージして頂くと分かり易いと思います。機器類はもちろん重要ですが、それだけでは意味を成さず、様々な種類の配管に繋がれて初めて、それぞれの役割を果たすことが出来る様になります。
例えば、タービン周りの配管を例に挙げますと、ボイラーからタービンへ蒸気を送る配管が必要となり、同時に、余剰な蒸気や水を排出するための配管も必要になるといった具合です。
多種多様な流体を循環させるために様々な配慮を要することから、配管設計では包括的な視点で設計を行っていくことが大切になります。
業務内容
計画 (1) | 機器レイアウト図等を基に、配管の概略ルートを計画します |
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計画 (2) | 機器から要求される温度・圧力等の条件を満たす配管仕様を設定します |
基本設計 | 代表的なラインについて応力解析等を行い、概算数量を算出します |
詳細設計 | 重要度の高いラインを中心に応力解析を実施し、配管の安全性を照査しますと同時に、配管が機器や架構に与える影響を照査します。 |
上記のうち、弊社が主に担当しているのは、詳細設計の部分になります。
そこで、以下に詳細設計の内容について補足します。
主な業務内容は大きく分けて、アイソメ図作成、応力解析、計算書作成の3つです。
アイソメ図とは? | 配管形状を線図で表し、配管仕様や付属品(バルブ等)の位置、機器ノズルの位置等を分かり易くまとめた図面です。 |
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応力解析とは? | 配管図やアイソメ図を基に、配管の仕様や形状を3次元でモデリングし、荷重条件を入力して、配管の安全性を確認する作業です。荷重としましては、熱や地震、風、振動といったものがあります。 |
主に、AutoPIPEやCAESARⅡといった解析ソフトを使用しています。
配管耐震診断
近年では既設プラントの老朽化に加え、社会的にも地震対策が急務である為
配管の安全性を評価する配管耐震診断のニーズが高まっています。配管系の耐震診断では実際の配管系を3次元モデル化し、条件設定の他、様々な影響を考慮して解析を行います。
解析で、不具合箇所は無いか、過剰設計ではないか等を確認します。
許容値を超える部分が発生した場合は、解消する為に配管サポート(配管を支持・固定する構造物)を計画したり、配管形状を見直す必要があります。
又、見掛け上問題なさそうに見えても、実は局部的に過大な反力が作用している場合がある為、解析結果を十分にチェックして、算出された数値を詳細に分析することも必要です。
地震で揺れた時に生じる変位量(応答変位)と、配管に生じる揺れ(慣性力)という、この相反する2つの要素を十分考慮して、どちらも満足する配管系を設計し、安全性を担保することが耐震診断の主な業務になります。
配管設計で心がけていること
配管設計・配管耐震診断は、その中身(流体)が可燃性・毒性が強く、例えば危険物が大量に貯蔵されたタンクに接続した配管系では、破損や漏洩を許さない設計が要求されるなど、様々な検討・配慮を要します。
石油系・化学系プラントなどには高圧ガス保安法が適用される配管が多く存在しておりますが、特に高圧ガスの分野は関係法令が最も多い部類になり、専門性も高く、非常に複雑です。一般配管とは異なり、高圧ガス配管は様々な事態を想定して耐震診断を行う必要があります。
また設計初期の段階から関係各所の皆様と密に連絡を取り合いながら、工程を作り上げていくことも重要な業務です。高圧ガス配管を改造する際は、プラントを管轄する自治体の審査を仰がなければ工事をする事が出来ない為、納期の厳守も重要です。又、地震力の考え方については指針や告示の他、自治体によって個別に定められている場合もあるので、診断を行う前に製造所や関係各所へ確認を行います。
配管設計は、安全な設計をすることで様々な人や社会に貢献でき、利益にもなる、言い換えれば「人の命を預かる」大変重要な仕事だと思います。配管設計を行う者として、法的な理解と包括的な設計が出来るよう今後も研鑽に励み、安全な設計を心掛けて参ります。
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